赤ちゃん登場
- IzumiTakiguchi
- 2018年8月22日
- 読了時間: 6分

前回の続き
カウチに横たわった私は、片膝を持ち上げて、ダンゴムシの様にカラダを丸くする様に指示をされました。
でも、もう自分のカラダを自分で動かす余力が残っていない私。
アンドリューがカウチの裏に立って、私の代わりに膝を持ち上げてカラダを丸くするのを手伝ってくれました。
真っ暗な部屋の中でポーラが頭に登山用の懐中電灯をつけ
その灯りだけで
私達は最後の行程に入りました。
ただならぬ雰囲気に犬のジェイミーはおとなしくしていました。
本来はジェイミーは、ペット用ホテルに預ける予定でした。
でも、ポーラが言いました。
『ジーザスが産まれてくる時に、
動物に囲まれて見守られながら産まれて来たッて言うじゃない?
私は、ペットも家族の一員なのだから、出産には立ち会うべきだと思うのよ。
その方が全部を理解して、新しい家族を受け入れやすいと思うわ。
それを今まで何度も見て来たから、私はジェイミーがいても大丈夫よ』
と。
もしも私が、病院出産だったら、きっとジェイミーは戸惑った事だろう。
でも、彼女は私の陣痛の始まりからずっとこの流れを見て来て
状況を理解しておとなしくしている様子でした。
さて、子宮口は10㌢のフルに開いています。
後は、私が赤ちゃんとダンスをするだけです。
陣痛が来る度に私は、膣に思いっきり力を込めて押しました。
この時、ポーラもヘイリーもグレイシーも『とても上手よ!!!!!』
と感嘆したのを覚えています。
それを聞いて、『ジェイドエーーーーグ!!!』と心の中で叫びましたよ。
確かに余力が限られている中で、膣に対してつながって、ドンピシャに押せている感覚
これは、バリ島で習ったジェイドエッグ様のおかげだわ。
ジェイドエッグとは
卵形のクリスタルを膣に入れて、そのクリスタルを膣内の筋肉で上下に動かす運動で
私は膣の筋肉と脳の連動が出来ていました。
だから、膣とつながる感覚があり、どこを押す場所が分かっていたと言う感じです。
それでも、なかなか出てこない。
こんなに陣痛は強いのに、どうして???
そして、尿道の方に燃える様な痛みを感じ始めました。
その感覚で私は押す事をためらいました。
それにいち早く気付いたポーラ。
すかさず
『燃える様な痛みがあるのかな??』と聞きました。
うなずくだけで精一杯の私。
すると『ここね』
そう言って、彼女が私の膣のどこかを触って動かした瞬間
私は一瞬の自由と解放さを感じて、
『気持ちがいい〜!!』
金メダルをとった北島公介選手並みに思ったほど。
『そのまま、ポーラ、手をキープして!!!!』とポーラに叫んで伝えました。
後からグレイシーが言うには、
私の子宮口の一部が引っかかっていたとのこと。
それをポーラが長年の経験からゆっくりと押して、私の子宮口の開きをサポートしたのだと。
もしも、これがただ、産婦が押し出してくるのを待っているお医者さんだったら
私の燃える痛みを感じていた膣は間違いなく、
大きく亀裂を作っていた事だと思うとゾッとしました。
こんなに初めっからやる気満々の陣痛の強さ。
それは22時間かかったあとも衰える事はなく、
その力強さに逆行してゆっくりゆっくりと赤ちゃんは私の膣から頭を出し始めました。
ポーラが私に手を伸ばして膣を触りなさいと言ったとき、
私の手にはぬるぬるとしたまあるい赤ちゃんの頭がありました。
あるううううううううう
きったあああああああ
ぬるぬるううううう
そう感じて、私はカオをグシャグシャにして泣きました。
うわーん!!!と。
ただ、そんな感傷的な気分にさせてはおかない陣痛の荒波。
次の陣痛が来た時に、「その頭を触り続けて!」
というポーラのかけ声の元、私は頭が出てくるのを感じながら押しました。
うごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
YOU Are doing GREAT!!!!!
そんな言葉が私を勇気づけ、あとすこし、あと少しと
出ては入るを繰り返す波の様に
赤ちゃんは陣痛とともに動いて出て来ました。
ここだ!!と思った瞬間、
ニュルリと頭が私の膣を通過したのを感じ、
その次に、肩がニュルリと出たのを感じ、
そして、最後にお尻がニュルリと出たのを目を閉じながら私は感覚として
しっかりと分かりました。
出産の痛みをスイカが鼻から出て来るッて言うけど、
こりゃ、痛みの話ではなく、出て来る行程の話だなと、その一瞬にして思ったほど。
つまり、
絶対に無理だと思える大きさのサイズのものが
無理でしょうと思うサイズの輪から出て来るのだから、
鼻からスイカはあながち間違いではない例えだわ。
でも、痛みの事ではなく、出産の瞬間の感覚の事よねと。
出て来た瞬間に
おぎゃああああーと泣く声とともに
私の胸に着地した赤ちゃん。
その瞬間の私は、『おわったああああああ』という気持ちで一杯でした。
そして、すぐに彼女は私のおっぱいに駆け上がって、のみはじめました。
これは、後から映像でみたのですが、
首に太い太いへその緒が2重に巻き付いていました。
運動会の綱引き用ロープか?ッて言う位に
太いへその緒から
沢山の力強いエネルギーを感じ、
そして、
こりゃ、こんな太いへその緒が巻き付いているなら時間がかかる筈だわと、理解をしました。
それでも、映像でみたポーラの手さばきはとても美しかった。
そのヘソの緒をクルクルと取り除きながら私の胸に出来るだけ早く連れて来る姿を
映像でみて私は、彼女が助産婦で本当に良かったと思いました。
興味深いもので、
彼女が出て来た瞬間に、規則的に続いていた陣痛は、まるで何もなかったかのごとく
ピタリと止みました。
それと同時に、私の中で陣痛の痛さがどういうものだったか、
全く持って忘れてしまいました。
痛かったのは覚えています。
でも、どんな痛さだったかは、思い出せないのです。
力つきた私は、そのまま横になって休んでいました。
どれ位経ったか忘れましたが、
ポーラに『後陣痛が来たら、胎盤を押し出すのよ』と言われました。
でも、後陣痛ってなんですか?という位、陣痛はこない。
ちょっとカオをひそめたポーラ。
そして、彼女が言いました。
『陣痛がなくても、押し出してみて』
『いやじゃ。もう押し出す事が出来ませぬ』
と言うと、
『押し出すの!』
と言うポーラ。
『はーい』と渋々言いながら、押し出すってなんだっけ?と
思い出せる限りで押し出してみる。
そして、スイカより簡単な形でタコが出て来た感じでニュルリと何かが出て来た。
その瞬間にポーラとヘイリーがバタバタと動き出した。
ここから緊急事態が始まり私の身体はガタガタと震えだし、
どんどんと私の身体は黄土色に変色をしていったのでした。
続く
モノクロから虹色へ