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執着を手放す為に


前回の続き

タコの様にニュルリと出て来た胎盤を見て、

助産婦のポーラとアシスタントのヘイリーがバタバタと動き出した出産後。

異様な雰囲気の中でポーラが機械的に私に情報を話し始めました。

『赤ちゃんが出て来てる。でも胎盤全部が出ていないの。

 一部がカラダの中に残っているから、陣痛促進剤を打つわ。

 今から太ももに注射を打つからね。』

そして、

『これは、ザイトフェン。口の中に薬を入れるからね。』

そして、

『今から、液体をカラダに入れるからね』

何の注射か何の薬か何の液体か分からないまま、

それでもポーラがやる事だからと絶対的な信頼を置いて

私は身を委ねました。

何が起きたのか後から聞くと

出て来た胎盤を見て、ポーラは全部の胎盤が出て来れなかった事に気付き

子宮口が閉まる前に手を入れて、残りの胎盤を取り出したとの事。

それを見ていたアンドリューは、

ポーラが子宮口に手を入れてねじって出していたと、後から教えてくれました。

わたし自身もその行程をあとからビデオで見て

『こんなに胎盤って大きいんだ!』と驚いたと同時に

ポーラがそれを見てバタバタと動き出しカメラが中断しているのを見て

緊急事態だったんだなと感じました。

ヘイリーが説明をしてくれました。

『胎盤の一部がまだ低い場所になったのね。

 だから、出産中あなたのカラダは沢山の出血をしたの。』

きっと、水中出産だったら、水の濁りの中で、

胎盤が全部出ていなかった事に気付けなかったか、気付く事が遅れただろう。

そしたら、きっと私は、大量出血で緊急搬送されていただろう。

アンドリューが医療の立場から

『あの状態では、救急車を呼ぶのは、50/50だったと思う。

 ポーラとヘイリーはよく対応したよ。』

と。

私の身体はそれでも沢山の出血によって、黄土色に変色をし、カラダがあまりの寒さにガタガタ震えてきました。

『大丈夫、カラダが震えても』とポーラが言いましたが、

それが私の気持ちを落ち着かせる為だったのか、今となっては、どうかわかりません。

ただ、彼女が注射を私の太ももに打つまえに

『子宮を収縮させるから』と冷静ながらも有無を言わさぬ気迫で私に説明をした時、

私は一瞬たじろぎました。

皮膚の件でステロイドを止めてから

私は一切西洋医学の薬からは遠ざかっていました。

私の中で、薬は「悪」だと思っていた部分もありましたし、

副作用でカラダがやられると言う信じ込みもありました。

でも、その状況の中で、

ああああ、この状況の為に私は西洋医学に対する不信感を払拭する事を

妊娠中にさせられてきたんだと理解しました。(その内容はこちら)

もしも、その不信感を払拭せずに、この状況に入っていたら

私は、もしかしたら、薬を使ってしまったと自分を責めてたのだろうか。

もしかしたら、なんで薬を使ったの?とポーラを責めていたのだろうか?

それとも、もしかしたら、私が薬を使う事を拒否して抵抗して、

もっと大事になっていたのだろうか?

その後、ある母親が

医者から赤ちゃんに黄胆が出ているから、ケアが必要だと言われて

その医者嫌いの母親は『神は私達にパーフェクトなベイビーを与えたのだから、あなたは間違っている』と抵抗して、治療を拒否して、その赤ちゃんが死んでしまった

という記事を読んだとき、

もしかしたら、私もそう判断をする母親であったのかもしれないと思うと、

ゾッとしました。

それらを考えると、『こだわり』ってなんなんだろう??と。

私には沢山のこだわりがありますし、ありました。

その中には自分に役立つこだわりも役立たないこだわりもあるんだと。

職人のこだわりと聞くと、ブレない自分がある人間と言う印象です。

私は

西洋医学の薬(ステロイド)に頼る事を一切自分の皮膚には使わないとこだわった事で、カラダの事を深く学ぶ事が出来、食事や心を見る事で薬を使わなくても大丈夫な綺麗な皮膚になりました。

でも、

西洋医学に頼らないという事にこだわったら、今回大量出血で危なかったかもしれない。

私は

西洋医学の助けを借りたくないとこだわった事で、抗生物質を使うのを止めていました。そのおかげで自分の体の免疫がとても強くなりました。

でも、

今回、膣にGB菌があることで抗生物質を使わざるを得ない状態の中、抗生物質を使いたくないとこだわって、陣痛の途中で腕に点滴を打つための針を差す事を拒否していたら

今回緊急に対応する時に、点滴の準備をしないといけなくて対応が遅れたかもしれない。

すでにGB菌のための抗生物質を入れる点滴の用意が出来ていたが故に

すぐに緊急対応をする時に、カラダを支える別の液体を入れる事がスムーズに出来た。

しかも、アンドリューがこの点滴の針を私に刺してくれた事で、彼の仕事ぶりを感じる事も出来たボーナス。

私は

女性のカラダを知りたくて、

「自分のパワーで産んでみたい」と自宅出産にこだわった事で

助産婦さんのポーラとその生徒のヘイリーに出会い、そしてドゥーラのグレイシーの

素晴らしい女性3人に囲まれて、

産前ー産中ー産後に女性ってこんなにも素晴らしいんだ。

そして、

こんなにも、人との繋がりで私達、女性のカラダは機能している部分が大きいのだと、

今までに知り得なかった事を知る事が出来ました。

でも、

もしも、

私が水中出産にこだわっていたら、きっと胎盤が全部出ていない事に気付くのが遅れたり、水の中であるが故に、出血が促進されて、大量出血で危なかったかもしれない。

今、私は赤ちゃんを胸に抱けていなかったかもしれない。

こうやって俯瞰で見ると

全てがパーフェクトの流れでした。

でも、

私がこだわっていたら、きっとこんなにスムーズに上手く行かなかったかもしれない。

「こだわり」は、

「信念」という顔を見せる事もあり

「執着」という顔を見せる事もある

今回の妊娠ー出産のプロセスは私にそんな「こだわり」の二つのカオを教えてくれました。

そして、母子とも健康で安全な自宅出産とする為に、

私の中にあった執着と言う部分を手放させる行程を沢山与えてくれました。

信念とは、感覚的な愛からきているもの

執着とは、過去の経験による偏った怒りや悲しみの感情からきているもの

そんな風にも、今は思えます。

妊娠中は、どうしてこんな事が次から次へと起こるのだろう???と首を傾げていました。

(ここまでブログにお付き合い下さった方ありがとうございます。

 まだ続きますのでお楽しみに。

 ここから読んで下さった方よろしければこちらからお読み下さい)

病院が代わり、

低胎盤による自然分娩へのさまたげがあり

医者の一方的な言葉に怒りを覚え

糖尿病の検査にひっかかり、

そうこうしているうちに助産婦が去り、

そして、GBポジティブ菌に引っかかった事。

そうやって、

次から次へと起こる事に

私の願いは叶わないかもしれない。

うまく行かないのだから、諦めた方が良いのかもしれない。

そうやって、自分のパワーを所有することを諦める事を何度今までして来た事だろうか?

でも、ちがった。

これらの起った出来事は、私のやりたかった自宅出産を阻む為に出て来たのではなく

むしろ、最高最善の結果にする為に、必要だった事なのだと。

全ては私の最善の為に起こっていて、

私のやりたい事を最善の方法で叶える為に

神様が必要のないものをクリンアップをしている作業を与えてくれていただけなのに

わたし自身が『邪魔されている』と感じて頂けなんだと。

ポーラとヘイリーの緊急対応が素晴らしく良かったおかげで、

私の出血は止まり、カラダの震えも止まり、落ち着きを取戻しました。

それでも、立ち上がれない私は、カラダ中についた血をポーラが丁寧に濡れタオルで

まるで赤ちゃんのカラダを拭くかの様に丁寧に丁寧に拭いてくれました。

こんな風に、産婦の私を我が子の様に撫でるその手が温かくて、

私はその感覚に身を委ねていました。

その間、赤ちゃんはずっと私の胸の上でおっぱいを吸っていました。

彼女の吸う力は力強く、彼女の生きようと言う力がとても強く溢れて感じていました。

おそらく1時間45分ほど、ずっと吸っていた気がします。

この彼女の生きる力に後から私は涙する事になります。

さて、明け方3時頃でしょうか、

カンガルーケアを充分に終えた私と赤ちゃんは

アンドリューとポーラに抱きかかえられて

二階のベッドルームへと運ばれました。

赤ちゃんの体重を測り、赤ちゃんの心拍数などをチェックして、

彼女が健康である事をポーラは何度も『この子はなんて素晴らしい子なの!』と連発をしていっていました。

その声を遠くで微笑みながらアンドリューと聞いてホッとしていました。

力つきた私は、大人用おむつ一枚でベッドに横たわっていました。

大好きなポーラにケアをされている赤ちゃんを眺めながら、

幸せな空気に身を包まれながら時間がゆっくりと過ぎていきました。

そして、ポーラが全ての行程が終わって、帰るとき、

横たわった私の目の前で言いました。

『アンドリュー、ちょっと来て。大事な話があるの。』

そう言ってアンドリューの目をしっかりと見据えて、

ポーラは重大発表をするかのように真剣な面持ちで言いました。

『ここから24時間は絶対にいず美を1人にしないでちょうだい。

 24時間の内、お手洗いに行くのであればダッシュで行って。

 彼女が一人になる瞬間を出来るだけないようにしてちょうだい。

 一階に行く必要があるのであれば、

 必ずあなたがいる事をいず美に伝えて、感じさせながらいくのよ。

 これだけは絶対に約束してちょうだいね。

 私達は、明後日にまたいず美と赤ちゃんの状態をチェックしに来るから。

 頼むわよ』

まるで嫁に行く娘を案じるかの様に言うポーラに

私は『そんなに心配しなくても私、大丈夫よ』と笑いながら見ていました。

そして、翌日、

ポーラがそうアンドリューに言った意味を、私は心底、カラダ中で知る事になりました。

そうやって、赤ちゃんを迎えた初めての夜がもう終わろうとし

外はうっすらが明かりが出て来た朝5時にポーラとヘイリーとグレイシーは去っていきました。

続く

モノクロから虹色へ

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